薬と制度
肥満症の保険診療(ウゴービ・ゼップバウンド)の条件と自己負担
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この記事は一般的な情報で、診断や治療の判断の代わりにはなりません。自分が対象になるかは、医師に相談してください。
結論
- 保険診療で使えるのは、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、BMI35以上、またはBMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上ある「肥満症」の人です。さらに、その施設で6か月以上、食事療法・運動療法を続けても効果が十分でないことが条件です。
- 処方できるのは、専門医がいて、常勤の管理栄養士が栄養指導をするなど、国の「最適使用推進ガイドライン」の要件を満たす施設です。使える期間は、ウゴービが最大68週、ゼップバウンドが最大72週です。
- 3割負担の薬代だけの目安は、4週あたりウゴービ約1,800〜12,300円、ゼップバウンド約3,700〜13,500円です(用量で変わり、診察・検査の費用は別)。窓口負担が月の上限を超えたときは高額療養費が使えます。

保険診療で使える人の条件
| 条件 | ウゴービ(セマグルチド) | ゼップバウンド(チルゼパチド) |
|---|---|---|
| 持っている病気 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか | 添付文書は耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)まで含むが、保険が使えるのは高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがある場合 |
| BMI | BMI35以上、またはBMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上 | |
| 食事・運動療法 | 投与する施設で、治療計画にもとづく食事療法・運動療法を6か月以上行っても効果が不十分。その間、管理栄養士の栄養指導を2か月に1回以上 | |
| 持っている病気の治療 | 高血圧などについて、始める前から薬を含む適切な治療を受けていること | |
| 使える期間 | 最大68週 | 最大72週 |
| ガイドラインの版 | 令和5年11月(令和8年6月改訂) | 令和7年3月(令和8年5月改訂) |
BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算します。肥満に関連する健康障害は、日本肥満学会が挙げる11の病気(耐糖能障害、脂質異常症、高血圧、高尿酸血症・痛風、睡眠時無呼吸症候群など)です。自分のBMIはBMIと保険診療の条件で確かめられます。
処方できる施設と医師の要件
- 施設:内科・循環器内科・内分泌内科・代謝内科・糖尿病内科のいずれかを掲げる保険医療機関で、学会の専門医の常勤医師が1名以上いる(または他の施設の専門医と連携している)こと。学会の教育研修施設の認定、常勤の管理栄養士による栄養指導と記録、副作用にすぐ対応できる体制も求められます。
- 医師:高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・肥満症の診療の経験が一定年数あり、日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会のいずれかの専門医であること。日本肥満学会の専門医は「望ましい」とされています。
- 2026年の改訂で、患者への心理的なケアやサポートが必要という留意事項が加わりました。
どこでも受けられるわけではないので、まずかかりつけ医や内科で、条件に当てはまるか、紹介先があるかを相談するのが近道です。
続け方とやめ方
- 毎月、体重・血糖・血圧・脂質などを確認します。
- 3〜4か月使っても改善の傾向がなければ中止します。
- 5%以上の減量が得られたら、上限の週数を待たずに中止を考えるとされています。
- 中止後に悪くなった場合も、原則として6か月以上の食事・運動療法をしてから、必要なときだけ再開します。
3割負担の薬代の目安
どちらも週1回の注射で、少ない量から4週ごとに増やします。下の表は薬の価格(薬価)×3割で計算した4週あたりの薬代です。診察・検査・栄養指導の費用は入っていません。
| ウゴービ(MD、1本=4回分)の1回量 | 薬価(1本) | 3割負担(4週) |
|---|---|---|
| 0.25mg | 6,049円 | 約1,800円 |
| 0.5mg | 10,590円 | 約3,200円 |
| 1.0mg | 19,051円 | 約5,700円 |
| 1.7mg | 30,194円 | 約9,100円 |
| 2.4mg(維持量) | 40,861円 | 約12,300円 |
| ゼップバウンドの1回量 | 薬価(1キット=1回分) | 3割負担(4週=4キット) |
|---|---|---|
| 2.5mg | 3,067円 | 約3,700円 |
| 5mg | 5,797円 | 約7,000円 |
| 7.5mg | 7,721円 | 約9,300円 |
| 10mg(通常の維持量) | 8,999円 | 約10,800円 |
| 12.5mg | 10,180円 | 約12,200円 |
| 15mg(最大) | 11,242円 | 約13,500円 |
薬価は2026年10月27日時点のものです。ウゴービは費用対効果評価で2025年11月1日から価格が調整された後の薬価で、令和8年度(2026年4月)の薬価改定のあとも同じ額でした。ウゴービ皮下注MDは販売名が「0.25mgペン1.0MD」(1回0.25mg、1本に1.0mg)のように1回量と1本の量を表していて、1本で4回分です。ゼップバウンドは収載時の薬価のままで、費用対効果評価は2026年5月13日時点で「分析中」です(中医協資料と医薬品データベースKEGG MEDICUSで確認)。同じ成分のマンジャロ(2型糖尿病の薬)は2026年8月1日に薬価が25%下がりましたが、ゼップバウンドは対象に入っていません。薬価は改定されることがあります。負担割合は年齢や所得で1〜3割と異なります。
高額療養費
高額療養費は、病院や薬局の窓口で払った1か月の医療費が上限を超えたとき、超えた分が戻る制度です。上限は年齢と所得で決まります。厚生労働省の例では、2026年8月からの制度で、70歳未満・年収約370万〜約510万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円になります。2026年8月からは、月ごとの上限に加えて、8月から翌年7月までの年間の上限も設けられました。
上の表の薬代は、多くの場合、月の上限より少ない額です。ほかの病気の治療と合わせて上限を超えるかどうかは、加入している健康保険に確認してください。
ウゴービ・ゼップバウンドは、条件つきで「肥満症」の効能が承認された薬です。主な副作用は吐き気・嘔吐・下痢・便秘・腹痛などの胃腸の症状で、重い副作用として低血糖、急性膵炎、胆嚢炎、イレウス(腸閉塞)などが添付文書に書かれています。ガイドラインは、痩身・ダイエットなどを目的に使ってはならないとしています(主な副作用、適応外とは)。
よくある質問
Q. BMIが27未満でも保険診療で使えますか?
A. 肥満症の保険診療の条件はBMI27以上(健康障害2つ以上)またはBMI35以上なので、27未満は対象外です。
Q. すぐに薬を始められますか?
A. 投与する施設で6か月以上の食事・運動療法を行い、効果が不十分なことが条件です。初めて受診してすぐ薬が出るわけではありません。
Q. 自由診療で買うウゴービと何が違いますか?
A. 保険診療は条件を満たす人に、要件を満たす施設で使います。条件の外での使用は承認された使い方と異なり、副作用の救済制度の対象外になることがあります(救済制度の対象外になる場合)。
参考にした情報(確認日:2026年10月26日)
- 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(肥満症)令和8年6月改訂、厚生労働省 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(肥満症・令和8年6月改訂)
- 厚生労働省 セマグルチド製剤の最適使用推進ガイドライン(肥満症)の一部改正について(2026年6月19日)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(肥満症)令和8年5月改訂
- ウゴービ皮下注MD 添付文書(PMDA)、ゼップバウンド皮下注アテオス 添付文書(PMDA)
- 中医協 令和8年度費用対効果評価制度改革の骨子(案)参考資料(ウゴービの価格調整)
- 中医協 費用対効果評価対象品目(ゼップバウンドの価格)
- 中医協 ウゴービの費用対効果評価結果に基づく価格調整について(ウゴービ皮下注MDの規格と改定薬価)(確認日:2026年10月27日)
- 中医協 市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整の対象品目について(2026年5月13日。対象はマンジャロ皮下注)(確認日:2026年10月27日)
- KEGG MEDICUS 医薬品情報 ウゴービ皮下注MD・ゼップバウンド皮下注アテオスの薬価(確認日:2026年10月27日)
- 日本肥満学会 肥満症の診断基準に必須の健康障害
- 厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ